私たちは日常の中で多くの「選択」や「判断」を行っている。
しかし、それらの判断は必ずしも冷静で合理的なものとは限らない。
たとえば、
「通常価格12,000円 → 本日8,000円」
という表示を見ると、必要な商品でなくても「お得に感じる」ことがある。
これは アンカリング効果 と呼ばれる心理現象で、
“最初に与えられた情報” がその後の判断を大きく左右する。
この記事ではアンカリング効果の意味、発見者、具体例、ビジネス活用法、
そして誤認を避けるための対策まで幅広く解説する。
アンカリング効果(Anchoring Effect)とは、
最初に提示された数字や情報(アンカー)が基準となり、
その後の判断や意思決定に強い影響を与える現象 のこと。
この現象は、
- 価格の判断
- 条件の比較
- 価値の評価
- 相手の印象
など、生活のあらゆる場面に潜んでいる。
たとえ最初の数字が根拠のないものであっても、
一度提示されると脳はその数字を「基準値」として扱ってしまう。

最初に見た数値などが、なぜか頭から離れないね

でも、複数比較すると基準が明確になること多いよね
アンカリング効果を提唱したのは、行動経済学を切り開いた二人の研究者。
- エイモス・トヴェルスキー(Amos Tversky)
- ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)
彼らは1970年代の研究で、
「人間の判断は合理的ではなく、直感や思い込みの影響を受けやすい」
ということを実験的に証明した。
カーネマンはその研究が評価され、2002年にノーベル経済学賞を受賞している(トヴェルスキーは受賞前に逝去)。
1. 脳は「比較」で判断する仕組み
人間の脳は絶対的な判断ができず、
常に「何かとの比較」によって価値を決めようとする。
最初に示された数字が比較の基準となり、
その後の判断がすべてその基準に寄ってしまう。
2. “情報コスト”を減らしたがる
人間はできるだけ少ない労力で判断したがる。
そのため最初の数字を「正しい情報の目安」として利用しやすい。
3. 考え直すのが面倒
一度アンカーが形成されると、
「本当に正しいか?」と考え直すことに脳が抵抗するため、
最初の情報に引っ張られ続ける。
1. セール表示の“元値”
「通常12,000円 → 8,000円」
この“通常価格12,000円”がアンカーになり、
8,000円が非常に安く感じられる。
実際には元値が高く設定されているケースもある。
2. 不動産の初期提示価格
最初に「この物件は3,200万円です」と提示されると、
その後の交渉で3,080万円になっただけで“得した気分”になる。
3. 初回無料・期間限定の数字
「初回0円」「今なら半額」
この“0”や“大きい割引率”が強力なアンカーとなる。
4. 仕事の依頼や納期
「この作業は30分でできますか?」
と言われると、本来1時間かかる作業でも
“30分が基準” となり判断が歪む。
5. 人の印象評価
「この人、年収800万円くらいらしい」
→ 年収という数値がアンカーとなり、人物像まで高評価寄りになる。
1. 価格設定に活かす
アンカリング効果はマーケティングの基本技術でもある。
- 比較用に高額の商品を置く(松竹梅の法則)
- “通常価格” を明確に提示する
- プランを複数提示し、真ん中を選ばせる戦略
これらはすべてアンカリングの応用。
2. 交渉・提案で主導権を握る
最初に条件を提示する側が有利になりやすい。
- 給与交渉
- 取引条件
- 契約の見積もり
最初の数字を出すことで、相手の判断範囲を狭められる。
3. マーケティング・広告での訴求
広告では、最初に“印象的な数字”を与えることが効果的。
- 97%の利用者が満足
- 今だけ50%オフ
- 〇〇万人が利用中
これらもすべて最初の数字をアンカーとして使う技術。
1. 最初の数字を疑う
- 本当に適正な価格か
- 元の値段は妥当か
と一度立ち止まるだけで判断が変わる。
2. 複数の情報源を比較する
一つの数字に依存しないために効果的。
3. 判断時間をおく
時間を置くことで、アンカーへの依存が減る。
4. 感情が動いた時は特に注意
“お得感”“焦り”“限定”といった感情が強く動くと、アンカーが効きやすくなる。
- アンカリング効果は、最初の数字によって判断が操作される心理
- 発見者は エイモス・トヴェルスキー と ダニエル・カーネマン
- セール、交渉、価格設定などあらゆる場面に存在
- 理解すればビジネスに活用でき、知らないと損をしやすい
- 数字を鵜呑みにせず、複数比較し、時間を置くことで対策可能
アンカリング効果は、知っているだけで日常と仕事の判断力が大きく向上する。
ぜひ参考にしてほしい。

