「人気の動画はほんの一部」「有名人ばかりが注目される」――
そんな世の中の偏りを感じたことはありませんか?
実はそれ、ジップの法則(Zipf’s law)で説明できる現象なんです。
この法則は、言葉、都市、経済、SNS…どんな分野にも顔を出します。
今回は、この不思議な「偏りの法則」をわかりやすく解説していきます。
提唱者はアメリカの言語学者、ジョージ・ジップ(George Zipf)。
彼は、言葉の使われ方を調べるうちに、ある“規則性”を発見しました。
「1位の単語は2位の単語の2倍、3位の単語の3倍使われる」
つまり、順位と頻度が反比例するという法則です。
驚くことに、このパターンは言語だけでなく、都市の人口や経済活動、SNSなどにも当てはまります。
🔹 言葉の世界
日本語では「の」「に」「は」など、よく使われる助詞が文章の大部分を占めます。
一方で、ほとんど使われない単語は山ほどある。
これが、ジップの法則の典型例です。
🔹 都市の人口
世界の都市を人口順に並べると、1位の都市(東京など)は、
2位の都市の約2倍、3位の都市の約3倍の人口を持つ傾向があります。
🔹 SNSやYouTube
SNSでも似た現象が起きています。
投稿のごく一部が「バズ」を生み出し、上位数%のクリエイターが再生数や収益の大部分を占めています。
🔹 ネット通販
Amazonや楽天でも「売れ筋ランキング」の上位数商品が、
全体の売上の大半を占めています。
人間の心理や社会システムが大きく関係しています。
- 人気のあるものは、さらに選ばれやすい。
- 人は「多くの人が選んでいる」という情報に安心を感じる。
- 結果的に、「強者がますます強くなる」構造が自然と出来上がるのです。
このような“累積優位”は、SNSでも経済でも、放っておいても発生します。
ジップの法則が生み出すのは、いわゆる「上位独占構造」です。
- 富が一部の層に集中する
- 有名人ばかりが発言権を持つ
- 情報の多様性が失われる
つまり、平等を目指しても、自然な偏りは完全にはなくならないということです。
しかし、悲観する必要はありません。
この法則を理解して動けば、個人にも十分チャンスがあります。
🔹 ニッチ戦略
上位に真っ向勝負を挑むのではなく、
「小さくても確実に価値を届ける」 niche(ニッチ)な分野で戦う。
🔹 継続と発信
継続することで少しずつ順位が上がり、やがて“見られる側”になる。
ジップの法則の中でも、中位層が上位に食い込むことは可能です。
🔹 差別化と共感
大量生産の情報ではなく、あなた自身の体験や想いを発信すること。
それが“唯一無二”の価値になります。
ジップの法則は、
「この世界の偏り」を説明する数学的な法則です。
一部が突出し、その他が追いかける――
それは不公平ではなく、人間社会の自然な構造。
けれど、法則を理解し、戦い方を変えれば、
その中でも確実に存在感を出すことができます。
世界の偏りを嘆くよりも、
その構造を“使いこなす”側に回ろう。

